こだわりのいっぴん

鑿鍛冶、高田良作



三木に出張した時に(14/7/24)、高田製作所に午後5時頃にお伺いしました。
次は、その時に高田良作さんにお聞きした話です。(下の写真は、当日、工場で撮らせて頂いたものです)

ご本人と息子さんがおられましたが、息子さんは一年前から跡を継ぐべく工場に入られて修行中とのことでした。

高田さん「奈良の古い寺が改修工事をしている現場を訪問した時のことですが、その仕事場へ行ったら、私の鑿がたくさん使われていました。それが、どこから納まったものか解りませんが、何方かが揃えて下さったようでうれしかったですね。
各地にお祭りに山車が出るところがありますが、そういうところへは私の鑿が結構使われているんです。
例えばあるところでは、最初、職人さんが一式を揃いようとすると、まず150種類を納めて、その後に必要に応じて追加注文が来ます。方々の山車を作る職人さんに納めているのですが、そう言えば青森県だけは納まっていませんね。
それで年に一度は、それらのお得意さんを訪問するようにしているのですが・・・、一日に精々5〜6件しかお伺いできず、なかなか廻り切れないでいます。
木彫り鑿はさまざまな種類があり、それぞれにサイズがありますので製作が大変です。」

私「多品種少量を造っておられる訳ですが、金型はあるのですか。」
高田さん「いや、総て感で造ります。サイズにしろ、丸みにしろ紙一枚の差があってもいけませんから・・・、大変です。」

私「東郷鋼の犬首号はラベルではハイスとなっているのですが、今のハイスとは違うようですね。」
高田さん「私はハイスではなくて合金鋼だと思っています。なんか、作業の難しい鋼のようですよ。」

私「東郷鋼レイ号は白紙系ではないでしょうか?」
高田さん「いや、違います。ハイスでもないし、合金鋼です。今の青紙もスーパー鋼もモリブデン系の合金ですが、当時はモリブデンを使う考えが無かったのか、レイ号はタングステン系の合金です。ただ、グラインダーに掛けると火花は黒くて青紙と同じような火花が出ます。」

私「玉鋼で鉋を造られるそうですが。」
高田さん「造りますよ。こんな玉鋼を鍛えて使っています。」
と言われて、コークスのように空洞のある鋼の塊、古い玉鋼そのものを持ってきて見せてくださいました。
それを鍛造して空気や不純物を削除して、炭素量を調整して使うとのことでした。
高田さん「玉鋼は最初炭素量は凄く多いので、それを適当なところまで落として使います。また、玉鋼の鉋の場合は、生鉄にたたら製鉄で造った和鉄を使うのですが、手持ちの和鉄が少ないので、もし、玉鋼の鉋を注文されるのでしたら和鉄を持って来て欲しいのです。
他からも和鉄だからと言って和釘ばっかり貰うのですが、これを鉄にするには手間が掛かって困ります。」
と言われて、在庫しておれる庖丁鉄(昔の生鉄)と、和釘を鍛えて鉄の塊にする途中の巣の空いたような鉄の塊を持ってきて見せて下さいました。
確かに、釘から均一な鉄にするために随分手間が掛かるようで、これだけ手間を掛けては合わないだろうと感じました。

実は、私は和鉄を結構持っているのです。刀は今の洋鉄では造れません。
最近でこそ、日刀保がたたら製鉄をしていますが、以前は刀匠が刀を造ろうとしたら、古い玉鋼を使うか、和鉄を卸して鋼にして造るかしかなかったのです。
私は、その頃に和鉄を集めておけば、将来、現代刀匠に刀を作ってもらうときに有利になると考えて、和鉄を出来るだけ集めるようにしていました。
そんな頃、古い家だと聞いていた母の実家が蔵を壊すと聞いて、戸前と扉の蝶番、更にレール、鉄格子を分けてもらいました。それが結構沢山あるのです。その蝶番の一箇所に「明治四年辛未九月吉日 金治作」の作銘があります。当時、新潟の片田舎に洋鉄はまだ来ていなかったはづで、間違いなく和鉄だと思っていましたので、それを生地に使って作って頂くことにしました。(初回5枚分として、蝶番の1組約5.4kgを送ったところ、丁度5枚が取れたとのことでした)

           左の銘の写真をクリックすると、蔵金具の他の写真がご覧
      頂けます。
その他の雑談で次のような話をされました。

高田さん「鉋職人の某さんが5寸鉋の注文を受けたそうですが、その寸法の鋼はあるのだが地金が無くて困る、どうしたら良いかと、何度か人伝てに話が来ました。
実は、鉄はいくらでもくっ付いて大きくなるものなのです。 生鉄と鋼でも、接合材を使わなくても温度さえ上げればそのままでもぴったりくっ付きます。ただ、鋼は温度を上げ過ぎるとバカになりますから、上げないで接けた方がよいので、硼砂を着けて低温で付けるのです。
ですから、生鉄ならお互いにある程度温度を上げるとお互いにくっ付こう、くっ付こうとするものなんで、幾らでも大きくなるものなのです。」

高田さん「私は鑿が本業ですから、鉋の形は旨くありませんが、数が余計でなければ造りましょう。」
私「白紙の鉋を作ってもらえませんか。」
高田さん「造れますが、白紙なら他の人が幾らでも造る方がおられますからね・・・。」と言われて、あんまり乗り気がしないご様子でした。

高田さん「高くもらうと切れないと言われた時に困りますし・・・。ある時切れてもいつも同じに切れるわけでもないですから困ります。」

私「玉鋼は焼きが入りにくく、よく雲が出ると言われますよね。」との質問には、
高田さん「焼入れに注意すれば、そんなことはありません。」との頼もしいお答えでした。

私「東郷鋼レイ号はまだ大分あるのですか?」
高田さん「いや、そんなにありません。」

私も、永年大工道具を扱っていますので、結構、職人さんとお付き合いがありますが、高田さんはなんの気負いもなく、鋼と造り方についてたんたんと話をされましたし、それらの話が、総て、なるほどとうなづける話でしたので、とても満足しています。

それで、初回分として、玉鋼と東郷鋼レイ号の鉋寸八を各5枚づつ造って頂くようにお願いした次第です。
黒刃で頂き、研ぎは三条のうまい人にしてもらい、台入れも腕の良い人にして貰うつもりでいたところ、三条で研いでから傷が出ては困るので、こちらで研いでから送りますとのことでした。
そして、既にサンプルが出来ている立派な桐箱に作銘を毛筆で手書きしてもらって、そこに入れて販売します。
それだけの価値のある製品と考えています。

9月23日です。
高田さんの鉋は、当社の高級刃物に打つ「大納言」という銘を切って、三条で再度上研ぎを掛けて出来上がりましたので、玉鋼、東郷鋼の両方の鉋の写真と説明をアップしました。
こちらからお入り下さい。

12月2日です。
先月末に、三木出張の際に高田さんを訪問して、当社の東郷鋼大納言に使っている東郷鋼レイ号のラベルを頂いてきました。
戦前に鋼を購入した時に付いて来たラベルが、もう数が少なくなって数枚しかなかったので2枚だけ頂いましたが、そこには、「キサゲ・一般刃物・外科用具・鉋・刻印等」に適していると記載されています。

次が、そのラベルの記述です。
「此の東郷鋼レイ号は、銅・真鍮などの切削仕上げ工具として独特の性能を発揮し、又日本刀・鋸等の仕上用のセンの如きものに良く、工具としては、キサゲ・一般刃物・外科用具・鉋・刻印等に適します。尚此の鋼の焼き入れは、八〇〇度〜八三〇度に均一になるよう徐々に加熱後水中にに冷却する。焼戻しは工具の種類に応じて一五〇度〜二五〇度に加熱後空冷する。火造りは八五〇度から一〇〇〇度で手早く行い、焼鈍は七五〇度〜八〇〇度に充分保持後炉中で徐冷する。」

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